Peter Chen博士

原稿の方は第12章と第14章を入稿できたので、残りは第13章だけになった。この章のテーマはERモデリングで、ERモデルの表記法の歴史に関するちょっとしたコラムを書く都合上、ネットで関連情報を調べてみた。極東の国の狭い部屋にいるだけなのに、なんでもネットで調べることができてとっても便利である。

ネットをいろいろブラウズしていたら、ERモデルの元祖の表記法を考案したPeter Chen博士のホームページを見つけた。
Chen博士のホームページへ

以前からPeter Chen博士の名前は聞いていたが、どんな人なのか全く知らなかったので、自分の中ではニュートンパスカルソクラテスみたいな歴史上の人物のように思っていた。しかし実際に、ご本人の写真や経歴などを見ると、同時代を生きる生身の人間であることを実感できる。

海外の人に対してこういう感覚を覚えることはときどきある。以前、半分だけ外資の会社に勤めていたとき、David〜とか、Andrew〜などといった名前の人達が書いた文章を読む機会があった。英語の、しかも大量のドキュメントだったので読むのは大変で、内容もなかなか理解できなかった。このため、学者のような風貌の人が書いたのだろうと勝手に想像していたが、実際に本人達に会って見るとノリの軽い若者だったり、ひと癖ありそうなオジサンだったりしたので、ずいぶんギャップを感じたことを覚えている。

Chen博士の話に戻そう。氏のホームページからはいくつかの論文もダウンロードできるが、中でもERモデルを発表した1970年代以降の(氏の観点からの)歴史などを書いた"Entity-Relationship Modeling: Historical Events, Future Trends, and Lessons Learned"というペーパーが面白かった。ERモデル発表当時にCodd博士に痛烈に批判された話や、リレーショナルモデルとネットワークモデルの“宗教戦争”に巻き込まれた話などを読むと、この手の方法論をやっている人達は今も昔も変わらないことがわかる。また台湾出身のChen博士がERモデルを考案できた理由の1つとして、象形文字の漢字を使っていたことがある、なんていうこぼれ話も書いてあった。ERモデルも漢字もどちらも実世界の物事(エンティティ)を図式表現する点で類似性がある、なんて書いてあったけど、正直それはどうなんだろう。

面白かったのは、氏が論文の中で自分のことを"the author"と書いていたことである。"he"も使っていた。先日、「筆者か?私か?」というエントリを書いたが、英語でも自分のことをthe authorと呼ぶのはちょっと驚いた。恥ずかしながら、自分は洋書や英語の論文をほとんど読まないので、こういう場合の作法をよく知らない。もしかしたら氏が東洋人だからなのかな?

またChen博士のペーパーを読んで、IT業界で言いたことがあるなら、英語で勝負すべきことを実感した。ま、日本語で本を書くのに3年もかかっている自分には、どだい無理な話なんだけどね。