椿先生のデータモデリング本

DOAの椿先生が出した新しい本が今日届いた。

名人椿正明が教えるデータモデリングの

名人椿正明が教えるデータモデリングの"技" (DB Magazine Selection)

しかし「名人椿正明が教える〜」とは、凄いタイトルをつけたものである。
# もちろん椿先生を「名人」と呼ぶことについて、異論はまったくありませんが..
想像するに、このタイトルは出版社がつけたもので、椿先生によるオリジナルタイトルは副題の「データ中心システム開発原論」なのだろう。

目次を見たところでは『データ中心システムの概念データモデル』とかなり近い内容のようである。しかしTH法は優れた方法論なので、こういう形で広まるのはとてもいいことだと思う。



この本を読んで改めて気になったのは、ERモデリングの世界で表記法が不統一なことである。一応IDEF1Xが標準のはずだが、このTH法に加えて、T字型もあるし、渡辺幸三さん(→設計者の発言へ)も頑張っている。かくいう自分もデータモデリングの世界にUMLを持ち込んでいる不届き者かもしれない。

オブジェクト指向の世界でも、表記法がUMLでまとまる前はヒドい状態だった。1990年代中盤の頃は、OMTにブーチ、OOSE/Objectory、シュレイヤー&メラー、コード&ヨードン、マーチン&オデール、フュージョンなど各種の方法論が百花繚乱で、方法論によって基本概念の呼び名も異なっていたため、本を読み進めるのが実に難儀だった。

DOAの場合は基本概念の乱れはないし、表記法もエンティティの識別子を読み取れれば意味はわかるので、そこまでの混乱はない。しかし先日のマインドマップのエントリ(id:ahirasawa:20051115)にも書いたように、モデルはイメージでも理解するものだから、慣れない表記法は読みづらい。特にTH法の場合は、エンティティ間の矢印が識別子の伝搬方向を表現するため、依存関係を基本とするUMLと逆方向になるのが(自分としては)見づらい。母国語がUMLになっている自分としては、DOAの本を読む時の対策として、本の余白にクラス図をよく書き込んでいる。渡辺幸三さんに「次にモデリングの本を出すときは、クラス図を書き込めるように、余白をたくさん用意しておいてくださいねー。」と冗談でお願いしたこともある。

実際、表記法は何とかならないものだろうか。UML成立の立役者はラショナル・ソフトウェア社だったが(現在はIBM社が買収)、DOAの表記法についても誰かが政治的に動いてもらえると有り難い。そうすればきっとモデリング業界(!?)を制圧できるだろうし、業界の発展にも寄与するはずですよー。