白髪の男性に席を譲られた話

今週は、通勤電車の中で原稿書きに精を出した。
先週末の段階では進捗率65%といったところだったが、本日時点でなんと95%ぐらいまで(!)進捗できた。この週末はプライベートな予定が詰まっているため、原稿書きの時間をほとんど取れないが、この分だと月曜日には脱稿できるかも知れない。執筆開始から1週間で書き終えるなんて、自分にとってはほとんど奇跡である。

電車に乗っている1回あたりの時間はせいぜい40-50分だが、それでも平日4日間(今週月曜は成人の日)×往復の計8回を合計すれば数時間だから、結構な作業時間になる。行き帰りの電車で赤入れをし、その結果を家に帰ってからパソコンに打ち込んで印刷する。そして、その原稿を持ってまた翌日の電車に乗ることの繰り返しである。飽きっぽい自分には、数十分単位の集中を繰り返す方が性に合っているのかも知れない。あるいは朝晩2回ずつ原稿を査読&加筆することで、常にバックグラウンドで原稿について考える効果が出るのかもしれない。以前はドトールコーヒーショップにいないと原稿を書けなかったが、最近はもっぱら電車の中になってきた気がする。


話は少し変わるが、数年前に『リファクタリング』を翻訳していた時のことを思い出した。当時も仕事が忙しくて、なかなか翻訳の作業時間を取れなかったため、行き帰りの電車の中でいつも翻訳をしていた。

そんなある日の朝のこと。比較的混んでいた電車の中で吊革につかまって、分厚い原書と印刷した翻訳原稿を交互に見ながら、赤ペンを手にチェックしていた。すると不意に、目の前に座っていた50才をとうに過ぎた白髪の男性の方が声をかけてきて、なんと席を譲ってくださっている。自分よりも随分年上の方だったため、当然丁重にお断りしたのだが「まぁ、座ってゆっくり仕事しなさいよ」と強く勧められたので、厚意に甘えさせていただくことにした。

席を譲られたのは後にも先にも初めての経験だったが、なんだかとても嬉しかった。自分もあんな紳士になりたいものである。