DOA vs OOA対決(その1)

渡辺幸三さんが自身のblog「設計者の発言」で、DOA(データ中心アプローチ)とOOAオブジェクト指向アプローチ)の違いについて議論している。渡辺さんとはこのテーマについて、過去にも何度かメールなどで直接議論したことがある。とても面白いテーマだし、せっかくの機会なので、今回はblog上で議論してみようと思う。

実はこの議論の時はいつもそうなのだが、議論の中身と関係なく、強いストレスを感じる。この最大の理由は、渡辺さんが強く主張する意見に対して、自分が十分に反論しないからだと思う。正確には「反論しない」というよりも「あまり強く反論する気になれない」といった感覚である。

この原因は、方法論に対するスタンスの違いにあると思う。

自分は方法論を使う立場である。既存の方法論の中で役に立ちそうなものを選んで、実務で利用する。使いづらいところがあれば、自分の解釈で一部を割愛したり、内容を補うこともある。しかし所詮は方法論の利用者でしかない。

これに対して、渡辺さんは方法論の発案者である。氏のER図の描き方は「渡辺式」などと呼ばれているし、方法論をサポートするCASEツールまで自作してしまったスーパーマンだ。当然、方法論には自信をお持ちのはずだし、愛着もあるだろう。加えて渡辺さんは、数多くの企業の実システム開発で要求定義や設計を手がけた実績を持つ、方法論の利用者でもある。このため、実務においてユーザー企業の方とモデリングをする際の経験やノウハウをたくさんお持ちだし、人間の仕事(の一部)をコンピュータに置き換えることの難しさや面白さもよくご存じである。

そもそも方法論を「発案すること」と「利用すること」の間には、天地ほどの開きがある。これは方法論に限らない話だが、実務で役立つ体系的な技術を創り上げるのは大変な仕事だ。しかし、それを利用したり、批判したりするのは簡単である。したがって「方法論の利用者」でしかない自分が、「方法論の発案者(兼利用者)」である渡辺さんに偉そうに意見するのはそもそも図々しい話だと思う。

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また利用者として、渡辺さんの方法論が使いづらいと思うなら、無視すればいいだけの話である。それでも渡辺さんの意見が気になる理由は、自分が日頃から使っているUMLモデリングの弱点を突いているからである。加えて渡辺さんが書いた2冊の本には、方法論やモデルの表記法を超えたノウハウが書かれているため、無視するわけにもいかない。

そんな自分だが、渡辺さんとは同い年であることや、共に日経ソフトウエアの連載から兼業ライター稼業を始めた縁もあって、個人的に親しくさせていただいている。「方法論の利用者」という立場では共感できることも非常に多い。

と、ここまでで、だいぶ長くなってしまった。もったいぶるわけではないが、渡辺さんのblogに対する意見を述べるのは明日以降に持ち越そうと思う。

今はとにかく連載の執筆が最優先である(苦笑)。