集合論と2進数を中学で習わないなんて

原稿の執筆がほぼ終わってきたので、先週から見直しを始めている。この見直しが終わり次第、出版社に順次入稿し、編集者さんのコメントを反映したら次はゲラ作成である。ようやく大きな山を越えた感じだ。しかし編集者さんにとっては、これからが仕事である。(編集作業の流れは以前のエントリに書いた。あのときは雑誌だったが、書籍の場合も基本的には同じである。)

今回は執筆と並行して、何人かの方に査読をお願いしている。先日、その中のある人から「本文にある“中学校で習ったあの集合論の集合です”の意味がわからないです。自分は大学ではじめてベン図を見ました。」と指摘されてちょっと驚いた。

中学校で習った集合論は、鮮烈な印象として今でもよく覚えている。中学に入学して最初の授業が数学で、新卒の女の先生が教えてくれたのが集合論だった。それまでは数学といえば四則演算があるものとばかり思っていた。図形や確率でも計算式を使うのに、集合と要素、部分集合、和集合、積集合ぐらいしか出てこない集合論はなんとも不思議に思えた。もうひとつ不思議だったのが2進数である。計算自体はちっとも難しくないし、実生活で役に立つと思えないこの単元になんの意味があるのだろうと当時は思ったものである。

この話を会社の同僚にしてみたところ、ちっとも同意してもらえなかった。それどころか中学校では集合論も2進数も習ってないと言われた。ネットで調べてみたら、中学1年の1学期に集合論や2進数を教えるのは、昭和46年から54年までの9年間だけだったことがわかった。
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もちろん自分の場合、中学1年の10年後にコンピュータ業界に入ったおかげで、集合論と2進数は多いに役に立った。読み書きソロバンを別にすれば、学生時代の勉強でこれほど役に立った単元は他にないぐらいに思える。そういう意味で、昭和55年以降に中学校に入学したIT技術者は気の毒である。これだけコンピュータが普及しているんだから、数学だけは昭和54年の学習指導要領に戻すべきじゃないかと真剣に思う。