耐震強度偽装問題とライブドア事件

第9回記事を先週脱稿できたので、この週末は原稿書きの仕事をお休みした。

実際はもとから休みと決めていたわけではない。昨晩から今日にかけてパソコンに向かって過ごす時間はそれなりにあったが、自分にしては珍しくインターネットをブラウズして時間を過ごした。何を見ていたかというと、最近世間を賑わせている耐震強度偽装問題ライブドア事件に関する情報である。分譲マンションに住み、(一応)ITベンチャーに分類される企業に勤めている立場としては、どちらの事件にも強い関心がある。

しかし最近のブログを中心としたネットの情報の深さには驚かされる。適切なサイトに行けば、核心に迫る情報や事件の当事者のコメントなど、新聞やテレビには出てこない/出せない情報を得ることができる。



まずは耐震強度偽装問題。この事件は人ごとではない。だってもし問題のマンションが自分の住みたい場所に建っていたら、自分も買っていた可能性が十分あるから。自分がマンションを購入したときは、デベロッパーや販売会社がとにかく情報を出さないので憤ったことを思い出す。イメージビデオや、きれいなパンフレットを見せていい話ばかりするが、構造や契約内容の話になると、とたんにガードが堅くなる。モデルルームの撮影を拒否する販売会社もあった。

参考までに自分がお世話になった以下のサービスを紹介しておく。巧妙な偽装や工事段階での手抜きまでは見抜けないかも知れないが、サービスの費用対効果はとても良かったし、何よりも販売会社の仕掛けるイメージ戦略の夢から覚める効果が大きかった。
http://www.kon-arts.net/archi/

被害者の方々には大変失礼な表現だが、この事件は久しぶりに面白い。主な登場人物は、マンションの売り主、ホテルの経営コンサルタント、建築会社の社長と支店長、下請けの設計士、確認検査機関の社長あたりだが、どの人物もキャラが立っている。最近は有力政治家の陰もチラチラしていて、まるで推理小説のようである。真犯人が誰なのか思いを巡らすのも一興だが、おおかたオリエント急行殺人事件と同じ構造なのだろう。



そしてライブドア事件ライブドア近鉄バッファローズの買収の時に有名になったが、自分はそれまでこの会社のことをまったく知らなかった。しかし今回の件で、この会社の成長過程を知り、株をやらない自分にとって縁遠い存在であることがわかった。こちらの方は社長や会社の幹部など、登場人物が善人キャラに見える。テレビや写真の表情からは、学生のサークルのような軽い雰囲気さえ感じる。もともと学生のサークルの延長だった会社を、上場に関わった証券会社や出資した会社などの(表舞台に出てこない)大人達が利用し、(悪)知恵を授けて、時価総額数千億円の会社に仕立て上げたのだろうか。

自分は社会人になってからずっとIT関係の仕事をしてきた。コンピュータ業界と呼んでいた昔は、親戚や地元の友人から「難しそう」とか「残業が多くて大変なんでしょ?」などと言われることが多かった。しかし、IT業界と呼ぶようになった最近では「会社は渋谷や六本木ヒルズにあるの?」などと聞かれることがたまにある。しかしIT関係といっても、インターネットを使ってビジネスを行う会社と、IT技術を使ってシステムを作る側の会社ではまったく違うのだから、呼び名を変えてもらいたいものである。少なくとも今回の事件で「IT関係の仕事」がダーティなイメージにならないことを願っている。



珍しく社会的な事件のことを書いてみたが、次回からはまた連載日誌に戻す予定である。というか、最終回の構想をそろそろまじめに考え始めないとまた危なくなる。ま、でもいいか。今回の原稿が遅れても、その次の締め切りはもうないんだから(笑)。