ヒアリング相手に依存するモデリングのスピード

先日のエントリで予告したモデリングライブという企画を今日やってきた。
http://tbc.boxerblog.com/lab/2005/06/uml__fa71.html
午前と午後でお題を2つ用意して(1つはスーパーマーケット、1つは物流会社)、事前打ち合わせはほとんどゼロの状態で、その場でモデリングをするという企画である。半年前のオブジェクト倶楽部のクリスマスイベントでやったのとほぼ同じスタイルだ。そもそもこの企画を考えたのは、雑誌や書籍には書けないモデリングのノウハウを伝えたいと思ったからである。今回の連載では、パターンやモデリングの考え方、図の配置、名前付けのヒントなどを書こうと思っているが、それだけでは実業務でモデリングをするのには不十分である。実際の場面では顧客に積極的にセッションに参加してもらい、たくさんの情報を喋ってもらうために、場を盛り上げることが重要だ。そのためには、相手のキャラクタやその会社の雰囲気に合わせて、同業他社や他業種の話をしたり、くだらないジョークを言ったりして、とにかく場を盛り上げる必要がある。しかしこのあたりになると活字に書くのは極めて困難である。モデリングライブでないと伝わらない。

オブジェクト倶楽部のイベントの際はモデラーは自分だけだったが、今回は同僚の石川さんにも参加してもらった。二人でモデリングをすると、適当に相手に任せて休めるのでかなり楽だった。また顧客役は、やはり同僚の村上さんにお願いした。彼はもともと技術屋だが、最近は流通業の業務分析案件をいくつか経験しているので、顧客役をそこそここなしてくれるだろうと思ってはいたが、期待以上に流通業に詳しかったのでビックリした。受け答えも論理的でテキパキしていたので、とてもやりやすかった。

実際、モデリングの品質やスピードは、ヒアリングする相手からどれだけ的確な情報をいかに素早く提供してもらえるかにかかっている。所詮モデリングは「整理術」である。相手の話を論理的に整理し、構造表現をする上で浮かんできた疑問を確認するコミュニケーションの道具だから、それだけで何かを生み出せるわけではない。

以前自動車の販売会社のモデリングをしたときに、2日間で100ぐらいのエンティティの構造を描いたことがある。これは自分の中で最短記録だが、とにかくこのときは相手がすごかった。50代の情報システム部門の方だが、システム、運用、業務すべてに通じていて(実際に販売店で営業をやっていたこともあるらしい)、未確定な仕様が出てきても、その場ですべて決めてしまうスーパーマンだった。モデリングの品質やスピードがヒアリングする相手に大きく依存することを、このとき強く実感したものである。

今回の企画は転職エージェント主催の小規模な技術セミナーだったが、土曜日にもかかわらず結構たくさんの方が来てくださった。こっちは普段の仕事のノリでモデリングをやっただけなので、参加していただいた方が面白いと思っていただけたのかはよくわからない。しかし1日2回別のテーマでモデリングをするのは結構疲れた。短い時間の中である程度まとまった議論にする必要があったので、普段の1.5倍ぐらいのペースで進めたのも結構大変だった。しかし転職エージェントさんにとっていい商売になるのだろうか?だってモデラーを募集している会社なんてほとんど聞いたことがないから。