ベン図を持ち出した理由

連載第1回のタイトルは「ベン図を描けばクラス図はスラスラ読める」とした。

UMLに忠実に従うならオブジェクト図と呼ぶべきところだが、あえて集合論のベン図と呼んだ理由は2つある。1つは、オブジェクト図では直感的にわかりづらいクラスとインスタンスの関係を明示したかったこと。もう1つは、概念モデリングでは、クラスをプログラミング言語の仕組みではなく、たんなる集合として扱うことを強調したかったためである。(今回の連載では『オブジェクト指向でなぜつくるのか』で言えば「汎用の整理術」の方だけを取り上げている。)

ところで自分の場合、中学1年の1学期に集合論を習った。中学に入って最初の授業が集合論で、「一体これのどこが数学なんだろう」と随分不思議に思ったことをよく覚えている。(教育課程はコロコロ変わっているので、習った時期は人それぞれだろう)。

社会人になってから、学生時代の勉強が直接役に立ったと思える場面はそれほど多くない。しかし数学について言えば、この集合論と2進数を教えてもらったのは、IT業界に身を置く立場としては非常に有り難かった。最近は小学校でもパソコン実習があるそうだが、国家としてITリテラシを高めたいなら、2進数を早い段階で教えるべきだと思う。いっそのこと『プログラムはなぜ動くのか』を高校の教科書にしたらいいかも。とはいえ『オブジェクト指向でなぜつくるのか』はさすがに無理だろうなー(笑)。